研究概要 |
以前より海洋生物由来の顕著な生理活性を示すアシジアサイクラマイド(ASCI)をはじめとする数種の対称、及び非対称な環状ペプチドの立体コンフォメーションに関して研究を進めると共に、その立体構造と活性との相関性について検討してきた。これまでの研究結果からASCI、パテラマイド(PATE)Aは結晶中、溶液中共に化学構造と同様にC2対称で関係づけられるコンフォメーションを取るのに対し、化学構造が2回対称から大きくずれているPATE B,C,Dの溶液中での立体構造はねじれた非対称のコンフォメーションを取るということを明らかにした。 この様な実験結果からASCIの分子内2回対称性とその立体構造及び活性との相関を調べることを目的とし、ASCIの一方のIle残基を他のアミノ酸((1)Gly,(2)Leu,(3)Phe,(4)Ala,(5)Val,(6)Trpなど)に置換した誘導体を合成し、これらのコンフォメーション解析を行った。その結果(2)は結晶中、溶液中共にC2対称コンフォメーションを(1)(3)は溶液中では非対称コンフォメーションをとることがわかった。これらのことよりLeuの様に分子量は同じで形だけが違うIleとLeu程度の非対称ではC2対称構造が崩れないのに対し、分子内2回対称がある域値をこえると非対称な立体構造を取るということが確認できた。そして構造と活性との相関を調べる為、これら3つの誘導体についてL1210マウス白血病培養細胞に対する細胞増殖50%阻害濃度(=IC_<50>(μg/ml))を調べた。その結果ASCI:36.8,(1):>100,(2):60.2,(3):28.3であった。このことから(2)はASCIより活性が弱く、同じコンフォメーションをとる(1)(3)に関して(1)はほとんど活性が見られないのに対し、(3)はASCIよりも強い活性を示した。従って今回の結果から活性と立体構造との間には相関性が無く、活性発現に分子内2回対称性が必ずしも必要ないということが示唆された。
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