研究概要 |
本年度は、外分泌型ホスホリパーゼA_2(PLA_2)の中でも、牛膵臓より得られるPLA_2に着目した。本酵素はN-末端が7残基長い前駆体酵素(pro-PLA_2)として膵臓より発現され、トリプシンによってその7残基が限定分解を受け活性型酵素となる。前駆体酵素と活性型酵素では、ミセル状の基質に対して全く異なった活性力を示す。そこで、この機能発現機構を分子レベルで解明するため、牛膵臓由来pro-PLA_2と、トリプシンとの複合体のX線結晶構造解析を目的とし、複合体結晶の作成を試みた。まず複合体の調製は、pro-PLA_2がトリプシンにより分解されずに両蛋白質が結合し得る条件を考慮し、反応溶液の液性を中性から酸性側に選択し、さらにPLA_2の活性発現に必須であるCa^<2+>を添加した。複合体の形成は、Sephadex G-50カラムを用いたゲル濾過クロマトグラフィーにより確認した。 複合体の結晶化条件の検討は、室温において蒸気拡散平衡法により行った。沈殿剤としては、作用の異なる代表的なものである、硫酸アンモニウム、ポリエチレングリコール4000、2-メチル-2,4-ペンタジオールを用い、これらの濃度、及び溶液のpHを7.0から4.0まで変化させた。さまざまな条件検討の結果、10〜15%濃度のポリエチレングリコールを用い、pH6.5の条件において板状の結晶を得ることができた。しかしこの結晶では充分なX線回折データを得ることができなかったため、現在結晶構造解析に使用可能な良質の結晶を得るべく、結晶化条件の精密化を行っている。
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