研究概要 |
ヘアピン型リボザイムは,2つのステムループdomainからなり(domain I,II),domain Iにおいて切断反応が起こる.domain IIの5′側にdomain Iが接続しており,その接続部位で折れ曲がり,2つのdomain同志が相互作用することでRNAが切断される.平成9年度において,申請者は,3つめのdomain(domain I′)をdomain IIの3′側に接続した新規ヘアピン型リボザイムを構築した.この3つのdomainよりなるリボザイム配列をコードしたDNAを,プラスミドに組み込み,runoff transcriptionを行った.その結果,転写中にdomain I′において,自己切断(セルフトリミング)が起こり,3′側に付加するベクター由来の余分な配列が切り落とされ,本来の2つのdomainよりなるリボザイムが生成した.この切り出されたリボザイムは,標的RNAを切断することができた. リボザイムを細胞内で作用させる場合,リボザイム遺伝子を細胞内に導入し,転写によって目的のリボザイムを発現させる場合がある.DNAとして細胞内に導入する方法の欠点として,本来のリボザイム配列の下流に,ベクター由来の長い配列が付加し,その結果,転写されたリボザイムによる標的RNAの切断が阻害される.本年度に構築したセルフトリミング活性を有した新規リボザイムは,3′側に付加した余分な配列を自己切断し,それによって切り出されたリボザイムが,標的RNAを切断することが可能である.そのため,今後このリボザイムの細胞内での応用が可能であると思われる.また,1つのリボザイムによって,転写後の自己切断とその後の標的RNAの切断を行なうリボザイムの構築は初めてであり,構造活性相関の点からも,興味深いリボザイムであるといえる.
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