研究概要 |
近年、様々な組織においてレニン-アンジオテンシシ系の各コンポーネントの存在が報告されており、従来から知られている全身性のものとは異なった調節を受けていると考えられる、局所レニン-アンジオテンシン系が注目されている。我々はこれまでにヒト本態性高血圧症のモデル動物である高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、アンジオテンシン変換酵素阻害薬経口投与の腎局所レニン-アンジオテンシン系に対する影響を検討した。その結果、腎組織中のアンジオテンシンIIの濃度は血圧に比例して低下するが、血漿中のアンジオテンシンII濃度は変化しない事を見い出した。本年度は、異なる種類の実験高血圧モデルである2-kidney,1-clip Goldblatt型モデルを用いて、変換酵素阻害薬の腎組織レニン-アンジオテンシン系への影響の検討をおこなった。 高血圧発症進展期である腎狭窄後4週の2K-1C ratに、アンジオテンシン変換酵素阻害薬エナラプリルを7日間経口投与した。エナラプリル3mg/kg/day投与により、投与前値140mmHgから約30mmHgの降圧が観察された。この時、血圧の低下に比例して腎組織中のアンジオテンシンIIと血漿中のアンジオテンシンII濃度が低下した。またアンジオテンシンI濃度には変化は観察されなかった。一方、エナラプリル0.1mg/kg/dayの腎髄質内への持続投与を行った所、約25mmHgの降圧とともに腎組織中アンジオテンシンII濃度の低下が観察されたが、血漿中アンジオテンシンII濃度は変化しなかった。これらの結果は、高レニン性のモデル動物においてもエナラプリルの降圧効果には腎局所のアンジオテンシンII量の減少が関与していることを示唆している。
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