研究概要 |
心拍リズムの制御における細胞内Ca^<2+>の役割を明らかにするために、単離洞房結節細胞の細胞内遊離Ca^<2+>と電気的応答の関連を調べた。共焦点レーザー顕微鏡で洞房結節細胞のペースメーカー電位に応じた細胞内Ca^<2+>動態を検討したところ、特定の部位に局所的Ca^<2+>トランジェントが発生し、これが細胞内全体へ伝わりホールセルCa^<2+>トランジェントに至るというパターンを示すことを見出した。この局所的およびホールセルCa^<2+>トランジェントは電位依存性L-型Ca^<2+>channelを介した細胞外Ca^<2+>の流入とそれによる細胞内ストアからのCa^<2+>依存性Ca^<2+>放出により形成されることを示した(Circulation,(1997)96,No.8,I-239)。L-型Ca^<2+>channel電流に対するCa^<2+>放出によるCa^<2+>シグナルの増幅度合いは約3倍と、心室筋細胞において申請者が過去に報告した20-30倍に比較して小さく、従来考えられてきたとおり洞房結節細胞の細胞内Ca^<2+>ストアが未発達であることを示した。さらに、細胞内ストアからのCa^<2+>放出をryanodineやcaffeineで枯渇させると、ペースメーカー頻度が30-35%まで減少することを見出した。このことは、放出されたCa^<2+>がion channelやtransporterの活動の修飾によりペースメーカー電位の制御に関わっていることを示唆する。細胞内ストアからのCa^<2+>放出はCa^<2+>汲み出しモードのNa-Ca exchange活性を誘発するが、それにより算出されたNa-Ca exchange電流の密度は心室筋細胞の3倍以上と非常に高いことを見出した。このことは、Na-Ca exchange電流がペースメーカー活動電位にかなりの貢献をすることを示唆する(Biophysical Journal,(1998)74,No.2,A56、以上投稿準備中)。また、洞房結節細胞の代表的なペースメーカー電流の一つであるI_f電流の制御機構を検討し、細胞内Ca^<2+>およびcalmodulinを介して制御を受けている可能性を見出した(投稿準備中)。さらに、まだクローニングされていないこのI_fチャネルの構造に化から関わる解析を行い、cAMPによる活性化にカルボキシターミナル部分が必要であることを見出した(第71回日本薬理学会年会、投稿準備中)。現在は、洞房結節細胞のペースメーカー電位形成に関わるion channelやtransporterの中で細胞内Ca^<2+>による修飾を受けるコンポーネントを解析中である。
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