骨転移形成における骨内血管内皮細胞の役割を検討するために、BALB/cマウスの大腿骨より血管内皮細胞を分離し、SV40ウイルスを感染させることにより不死化した。その後クローン化することにより幾つかの細胞株を樹立した。樹立された細胞株は血管内皮細胞特有な形質を維持していた。ヌードマウスの左心室内移植により骨転移を生じるA375Mヒトメラノーマ細胞やMDA-MB-231ヒト乳癌細胞株の培養上清を、これら骨由来血管内皮細胞に添加すると、骨由来血管内皮細胞は骨吸収誘導因子IL-11を産生した。クローン化した細胞株だけでなく、初代培養の骨由来血管内皮細胞でも同様に癌細胞依存的にIL-11を産生した。ところが、他の臓器由来血管内皮細胞株ではこのようなIL-11の産生は認められなかった。よって、骨内の血管内皮細胞はIL-11を産生するというユニークな形質を持っていることを世界に先駆けて明らかにした。IL-11中和抗体添加により癌細胞による骨吸収が抑制されたことから、骨内血管内皮細胞もIL-11産生を介して骨転移巣における骨吸収並びに骨代謝に関与していることが示唆された。よって従来知られてきた骨芽細胞だけでなく、骨内に存在する血管内皮細胞も、破骨細胞の形成ならびに活性化に関与することが明らかとなり、骨代謝における新たな制御機構を見い出した。今後は骨血管内皮細胞並びに骨芽細胞より産生されるIL-11を標的にした骨転移治療法の開発を模索するために、IL-11の作用機作を検討していきたい。
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