BALB/cマウスの大腿骨より樹立された骨内血管内皮細胞は骨転移性癌細胞の培養上清添加によりIL-11を産生する。このIL-11産生を促進する癌細胞由来因子を同定するために、まず既知の液性因子を用いて骨内血管内皮細胞からのIL-11産生を促進する因子のスクリーニングを行なった。その結果、IL-1αとTGF-βが骨内血管内皮細胞からのIL-11産生を促進することが明らかとなった。そこで骨転移性腫瘍であるA375Mヒトメラノーマ細胞におけるIL-1αとTGF-βのmRNA発現をRT-PCR法で検討したところ、両者とも発現していたが、ELISA法で蛋白の発現を検討したところIL-1α蛋白発現は認められたが、TGF-β蛋白の発現は認められなかった。この結果は、A375Mヒトメラノーマ細胞の培養上清による骨内血管内皮細胞からのIL-11産生が、抗IL-1α抗体では中和されるが抗TGF一β抗体では抑制されないという結果によっても確認された。よって骨転移性癌細胞は、IL-1αを分泌することにより、骨内血管内皮細胞はIL-11産生を介して骨転移巣における骨吸収並びに骨代謝に関与していることが示唆された。また骨内血管内皮細胞はIL-11レセプターを発現していたことから、分泌されたIL-11は直接破骨細胞に作用して破骨細胞の形成・分化を誘導しているのではなく、オートクライン的に骨内血管内皮細胞に作用して何らかの破骨細胞形成誘導因子の産生を促進している可能性が示唆された。
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