研究概要 |
神経細胞にアポトーシス誘導刺激が加わってからcaspasesが活性化されるまでの過程において、ミトコンドリアの膜電位の平衡化とミトコンドリアからのチトクロームCの遊離のどちらがcaspases活性化に必須であるかを明らかにするために、小脳顆粒細胞の培養系を用いて、アポトーシス誘導刺激を加えた細胞のミトコンドリアの膜電位の変化を共焦点顕微鏡下、経時的にロ-ダミン123を用いて測定した。このとき、caspases活性化の前段階でアポトーシスの進行を抑制すると考えられるDIDSの作用を検討した.スタウロスポリン処理によって低下する膜電位は,DIDSの共存によって正常の電位に維持され、同様に、培養液中のカリウム濃度を減少させて細胞死を誘導した場合にも、DIDS非共存下では数時間でミトコンドリアの膜電位が平衡化したのに対し、DIDS共存下では膜電位が維持された。以上の事実より,DIDSはミトコンドリア膜の安定化によってアポトーシスの進行を抑制したと考えられた. ところが、ミトコンドリアの膜電位を平衡化するCCCP(アンカップラー)、あるいは、ミトコンドリアの電子伝達系酵素を阻害することによってミトコンドリアの膜電位を平衡化する作用を示す青酸イオンによって誘導される細胞死もDIDSの共存によって抑制されることを見いだした。現在、このとき、ミトコンドリアの膜電位が維持されているかどうかの確認を行っている。
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