研究概要 |
ペプチドトランスポータ(PEPT1)は小腸や腎臓に発現し、小分子ペプチドやペプチド類似薬物の吸収に重要な役割を果たしている。しかしその細胞膜局在性や細胞膜発現機構については未だ不明な点が多い。本研究では腎尿細管上皮細胞におけるPEPT1の細胞膜局在を解析するため、抗PEPT1抗体を用いた免疫化学的解析を行った。まず、ラット腎皮質より単離した刷子縁膜及び側底膜に対するイムノブロットを行ったところ、両細胞膜においてPEPT1が発現していたが、刷子縁膜においてより多くの発現が認められた。さらに、ラット腎臓凍結切片を用いた蛍光抗体法によりPEPT1の尿細管分布を検討した結果、PEPT1は近位尿細管S1,S2セグメントの主に刷子縁膜に局在していることが明らかとなった。また弱いながらも側底膜における発現も示された。 そこでPEPT1の細胞膜発現機構を精査するため、培養腎上皮細胞LLC-PK_1にPEPT1 cDNAを導入したPEPT1安定発現細胞、LLC-rPEPT1を用いた細胞生物学的解析を行った。まず、多孔性フィルター上にLLC-rPEPT1細胞を培養し、細胞膜表面の選択的ビオチン標識と免疫沈降法によってPEPT1の細胞膜局在性を定量的に解析したところ、両細胞膜においてPEPT1の発現が認められ、またその発現は頂側膜に優位であった。次に、LLC-rPEPT1細胞を[^<35>S]Met-Cysを用いて短時間標識し、パルス-チェイス実験を行うことによって生合成後のPEPT1の細胞膜への輸送を解析したところ、新たに生合成されたPEPT1は方向非選択的に頂側膜及び側底膜に輸送されることが明らかになった。現在、各々の細胞膜におけるPEPT1の挙動について解析を進めているところである。
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