近年、虚血性疾患・炎症をはじめとする数多くの疾患に活性酸素が関与することが明らかとされてきており、その治療に際してはスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)あるいはカタラーゼ(CAT)など活性酸素を効率よく消去する酵素の利用が有望視されている。しかし、これら生理活性タンパク質は投与後速やかに血漿中から消失することからこのままでは十分な治療効果は期待できないため、投与に際してはその有効性を向上させるdrug delivery systemの適用が不可欠であると考えられる。そこで本研究では、有効な投与方法の確立されていない生理活性タンパク質であるCATを取り上げ、様々な肝内動態パターンを示す誘導体を設計すると共に、肝臓虚血・再灌流障害モデルマウスに対し単独、あるいはSOD誘導体との同時投与を行い、虚血・再灌流障害に対する活性酸素分解酵素投与法の方法論の確立を目指した。CATに対し各種化学修飾を施すことにより、酵素活性を保持した誘導体の合成に成功した。また各誘導体は静脈内投与後肝臓へ移行したが、その取り込みは未修飾CATならびにガラクトース修飾体(Gal-CAT)は肝実質細胞に、一方マンノース修飾体(Man-CAT)およびサクシニル化CAT(Suc-CAT)は肝非実質細胞によるものが優先的であった。これら各誘導体を肝臓虚血・再灌流障害モデルマウスに対し投与したところ、いずれの誘導体も投与量依存的な障害抑制効果が認められた。しかしながら、その障害抑制効果は誘導体間で異なり、肝非実質細胞へ選択的に移行するSuc-CATならびにMan-CATの投与が障害抑制にはより効果的であることが示された。今後は、SOD誘導体との併用等に関してさらに詳細な検討を試みる予定である。
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