脳虚血/再灌流負荷により、MCP-1およびMIP-1αmRNAともに脳内での発現が観察されたが時間経過及び発現分布は異なっていた。MCP-1mRNAは、再灌流2時間から24時間後で強い発現が主に虚血辺縁部に見られ、48時間後では虚血中心部を含む広い範囲に発現が観察された。MCP-1mRNAはMac-1α陽性のミクログリアと考えられる細胞およびGFAP陽性のアストロサイトと考えられる細胞の両方で発現が観察された。一方、MIP-1αmRNA発現のピークは再灌流4時間後で、その後、徐々に減弱するシグナルが24時間後まで観察された。発現は主に虚血辺縁部で見られ、シグナルはMac-1α陽性細胞でのみ観察された。培養ミクログリアに種々の神経伝達物質を処置し、MCP-1mRNAの発現を検討したところATP処置により顕著な発現増加が見られた。ATP処置によりMIP-1αmRNAの発現も顕著に増大した。MCP-1およびMIP-1αmRNA発現は、LPS処置によっても顕著に増大した。培養アストロサイトでは、MCP-1mRNAの発現がインターロイキン-1(IL-1)により顕著に増加した。MIP-1αmRNA発現は未処置およびIL-1処置いずれのアストロサイトでも検出されなかった。一方、LPS処置ではMCP-1およびMIP-1αmRNAともに発現が誘導された。本研究により、脳虚血により脳内グリア細胞においてMCP-1あるいはMIP-1αといったケモカイン類のmRNAの発現が誘導されることが明らかとなった。培養グリア細胞を用いた実験において、IL-1やATPによりこれらケモカイン類のmRNA発現が誘導されることが示された。来年度の研究では、IL-1やATPが実際に虚血時における脳内ケモカインmRNA発現に関与しているかどうかを検討する予定である。
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