制癌抗生物質は顕著な抗腫瘍効果を有するものの、あまりに副作用が強いために、投与中断を余儀なくされ、これまでの臨床成績は必ずしも芳しいものではない。これら副作用の中でも骨髄抑制に伴う血小板減少が最大の問題となっているが、未だこれに有効な医薬品は存在しない。この様な血小板減少症は、近年の癌治療の一端を担う放射線療法やセフェム系薬剤等によっても生じてしまっており、これを克服する医薬品の開発が急がれている。一方、近年LIFが、巨核球を刺激し、血小板を増大させることが見出され、今後の臨床応用が切望されている。しかしながら、LIFは生体内安定性に乏しいため、臨床応用する際には大量頻回投与を余儀なくされ、予期せぬ副作用を招いてしまっている。そのうえLIFは多様なin vivo生理作用を有しているために、選択的に副作用のみを制御することは困難である。以上の問題は、殆ど全てのサイトカインに当てはまることである。この点、申請者はすでにTNF-α等のサイトカインを最適条件で水溶性高分子ハイブリッド化することで、サイトカインの生体内安定性を飛躍的に改善できること、さらにはサイトカインに作用の選択性を付与し得ることを見出している。本研究では、LIFなどを最適条件でハイブリッド化することにより、生体内安定性を高めるとともに、作用の選択性を導入することにより、次世代を見据えたサイトカイン製剤の開発概念を追求しようとするものである。以上の観点から本年度はポリビニルプロリドン(PVP)-ハイブリッド化LIFのin vivo血小板増加作用を評価した。その結果、最適条件でLIFをPVPハイブリッド化することで、LIFの目的とする治療作用(血小板増加作用)を効率よく高め得ることが判明した。今後、本年度得られたPVP-LIFの医薬品としての有用性をさらに確保していく観点から、Targeting能等の付加価値を有したPVP誘導体を新規合成し、本修飾高分子によるLIFのハイブリッド化などを試みる予定である。以上、当初計画通りの有益な知見が得られた。
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