研究概要 |
マルチフォーカス立体カラービデオ顕微鏡の開発と細胞内情報伝達機構解明への応用を試み、以下の実績を得た。 1.マルチフォーカス立体カラービデオ顕微鏡の構築 平成9年度の本研究により、倒立型顕微鏡、ビームスプリッター、ミクロメーター型Z軸ステージ(自作)、モノクロCCDカメラ、リアルタイム画像解析装置(昨年度設備備品費にて購入)を組み合わせたマルチフォーカス立体ビデオ顕微鏡の開発に成功した。本年度はさらに、より高度な解析を可能にすることを目的とし、モノクロCCDカメラでは抽出できなかった色調による情報をカラーCCDカメラにより検出し、細胞内の蛍光物質の動態変化を3次元的に詳細に解析するマルチフォーカス立体力ラービデオ顕微鏡の構築を試み、開発に成功した(Analytica Chimica Acta 365,3-7;115-120)。 2.RBL-2H3細胞におけるヒスタミン含有顆粒の動態細胞内カルシウム変化の3次元解析 上記1.で構築したマルチフォーカス立体カラービデオは顕微鏡を用い、アレルギー反応時に重要な役割を果たしているマスト細胞(RBL-2H3細胞)でのヒスタミン含有顆粒の動態と細胞内カルシウム変化の3次元解析を試みた。その結果、fluo-3蛍光を指標として細胞内カルシウムの変化を、2つ以上の焦点面で同時に観察することにより、(1)紹胞膜の直下数百nmの部分に従来の染色法ではfluo-3により標識されないカルシウム・ストアーが存在すること、(2)この新しく見つけたストアーは小胞体であること、(3)この細胞膜直下の小胞体と細胞膜との間でのカルシウム濃度の上昇が、抗原抗体刺激時の開口放出に必須であること等を発見した。今回の発見は、これまでの1焦点面のみでの観察では行うことが困難であり、マルチフォーカス立体カラービデオ顕微鏡の開発により初めて可能となった(JapanJ.Pharmacol.in press 他)。
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