研究概要 |
ヒト臍帯静脈内皮細胞に存在するカルシウム依存性カリウム電流について検討し、以下の結果を得た。なおこの成果は原著論文として発表済みである(BBRC,vol236,p340-343,1997)。 1継代培養(1代から3代まで)したヒト臍帯静脈内皮由来の血管内皮細胞を保持電位-40mVに電位固定下、ヒスタミンを投与したところ、一過性の外向き電流が活性化された。この外向き電流は、その逆転電位が約-80mVであること、細胞内にカルシウムキレート剤であるEGTAを灌流すると活性化されなくなることなどから、カルシウム依存性カリウム電流であることが判明した。 2また電流固定下ヒスタミンを投与したところ、カルシウム依存性カリウム電流の活性化によると思われる過分極反応が惹起された。 3このヒスタミン投与によって観察されるカルシウム依存性カリウム電流や過分極反応に対して、様々なカリウムイオンチャネル遮断薬の効果を検討した。大コンダクタンス・カルシウム依存性カリウムチャネルを選択的に抑制するといわれるイベリオトキシンは、ヒスタミン誘発性反応に対して無効であった。一方小コンダクタンス・カルシウム依存性カリウムチャネルを選択的に抑制するアパミンはヒスタミン誘発性反応をほぼ完全に抑制した。しかし一部の細胞においては、アパミン抵抗性のカルシウム依存性カリウム電流がヒスタミンにより活性化された。 以上のことから、血管内皮細胞にアパミン感受性カルシウム依存性カリウムが存在することを初めて示すことができた。2年度においてはこの電流の分子生物学的特性について検討する予定である。
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