免疫系の細胞間ネットワークにおいて抗原提示細胞からT細胞へのシステインの受け渡しに与えるトランスポーターの分子的実体を明らかにすることを目的として、以下の検討を行った。抗原提示細胞からのシステイン遊離は、アミノ酸輸送系Lを介して行われるが、C6グリオーマ細胞を材料として、アフリカツメガエルを用いた発現クローニングを行い、古典的輸送系Lの機能特性を持つトランスポーター(LAT1と命名)のcDNAを単離した。ノーザンブロットにより、LAT1がマクローファージ細胞株J774A.1に発現することを確認し、LAT1が抗原提示細胞からのシステイン遊離経路であることが示唆された。また、T細胞へのシステインの取り込みを担当するトランスポーターは、リンパ球の活性化にともなって発現の亢進するとされているアミノ酸輸送系ASCであると考えられているため、レクチンで活性化したヒトT細胞株Jurkat細胞に発現するASCトランスポーターのアイソフォームを変性オリゴDNAプライマーを用いた逆転写PCRにより検討した。検討した10個のPCR産物はすべてASCT2であった。また、ASCT2のアンチセンスオリゴDNAを用いたhybrid depletion実験において、活性化したJurkat細胞由来のシステインの取り込みは、ASCT2のアンチセンスオリゴDNAにより抑制された。従って、ASCT2が活性化したT細胞へのシステインの取り込みを担当するトランスポーターであることが支持された。
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