筆者は、すでに赤血球が酸化的ストレスを受けると膜でband 3タンパク質が凝集することを明らかにしている。そこで、膜タンパク質凝集量から赤血球が受ける酸化的ストレスの程度を評価することを目的として、平成9年度では、生体内に摂取されやすいフェノール性抗酸化物質として知られている一方、赤血球のヘモグロビンを酸化するようなプロオキシダントとしての作用を持つセサモ-ルの赤血球膜タンパク質に与える影響を調べた。 新鮮なヒト赤血球とセサモ-ルを37℃で1時間インキュベートし、セサモ-ル処理赤血球を調製した後、膜タンパク質の凝集物の単離を行った。セサモ-ル処理赤血球を低張処理してghostとしEDTAで処理した後非イオン性界面活性剤オクタエチレングリコールドデシルエーテルを加え可溶化し、不溶性物質を膜タンパク質凝集物として単離した。この凝集物のタンパク質定量を行ったところ、未処理赤血球膜から単離した凝集物よりも多量であり、またその量はセサモ-ルの濃度に依存して増加していた。ウサギ抗ヒトband 3抗体を用いたWestern blottingで凝集物中のband 3タンパク質の検出を試みた結果、凝集物中にband 3が認められ、セサモ-ルにより膜のband 3が凝集していると考えられた。次に膜タンパク質凝集機構を調べる為に、その凝集にヘモグロビン関与の有無があるのかどうか調べた。ヘモグロビンを完全に除いた赤血球膜ghostとセサモ-ルをインキュベートした後その膜ghostから凝集物の単離を試みた。その結果、ヘモグロビンの無い状態においてもband 3を含む膜タンパク質の凝集物が生成した。セサモ-ルはヘモグロビンを酸化するのとともに何らかの酸化的機序で膜タンパク質band 3の凝集をひきおこしていると思われる。現在、溶存酸素の影響について検討中である。一方、カテキン類やフラボノイドでは膜タンパク質の凝集はおこらず、赤血球の膜タンパク質凝集作用はセサモ-ルに特異的であるのかもしれない。
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