研究概要 |
平滑筋収縮時の収縮エレメントのカルシウム感受性を生理学的・薬理学的に解析するために,まず,ラット肺内細気管支平滑筋のスキンドファイバー標本の作製を試みた.本標本の作製には一般的に,β-escin,α-toxin等が用いられるが,数多くの検討を行った結果,幅0.1mm,直径0.3mmの肺内気管支切片に対して10μMβ-escinを23℃にて30分間処置することにより,再現性の良いCa^<2+>収縮が得られることが明かとなった.また,本スキンドファイバー法を用いて,正常群と、気道過敏性群の肺内気管支平滑筋のCa^<2+>収縮を比較したところ,両群間で著明な差は認められなかった.この結果より,気道過敏性時において,少なくともベースラインレベル(すなわちアゴニスト等の刺激が無い場合)の収縮エレメントのカルシウム感受性には変化がないことが明かとなった.現在,このスキンドファイバー標本を用いて,気道過敏性時におけるアゴニスト誘発カルシウム感受性亢進の変化について検討中である. 上記の生理学的・薬理学的検討と平行して生化学的手法を用いて,平滑筋収縮エレメントのカルシウム感受性に寄与していると考えられている細胞内情報伝達物質について,気道過敏性時における量的変化の検討を行った.カルシウム感受性亢進現象に,アゴニスト刺激により活性化されるプロテインキナーゼC(PKC)あるいは低分子量GTP結合蛋白質であるPhoの関与が報告されているが,これらをWestern blot法を用いて定量した.その結果,気道過敏性時に気管支組織のPhoAが著明かつ有意に増大していることが明かとなり,ラット気管支平滑筋において,PhoAがアゴニスト誘発カルシウム感受性亢進に関与しており,気道過敏性時にこのPhoAを介したメカニズムが大きく亢進しており,その結果より強い収縮が惹起される可能性が示唆された.一方,PKCについてはそのいずれのサブタイプについても,気道過敏性時には有意に減少していることが明かとなり,その役割についてさらに検討していく必要があるものと考えられる.
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