前年度までに、中枢神経系組織(モルモット大脳皮質・小脳、ヒト癌化アストログリア細胞)および末梢組織(モルモット回腸平滑筋)を用いてCa^<2+>動員性受容体(ヒスタミンH_1受容体およびムスカリン受容体)と細胞内情報伝達の脱感作過程を解析し、その結果、各組織・細胞ともに高濃度アゴニスト刺激に伴い受容体レベルで脱感作が進行し、その脱感作進行初期に一過性の回復現象(一過性再感作現象)が認めらることが明らかとなった。このような脱感作の進行を制御する再感作機構の解明は、生体制御機構の解明という面のみならず薬物治療の面でも重要な課題である。当該年度は、脱感作進行初期に生じる一過性再感作機構の詳細を明らかにする目的で、ヒト癌化アストログリア細胞のヒスタミン刺激によるヒスタミンH_1受容体を介した細胞内Ca^<2+>濃度上昇反応の脱感作進行過程をモデル系として用い、脱感作進行初期に生じる一過性再感作機構におけるCa^<2+>/カルモジュリン系の役割について検討した。その結果、(1)外液Ca^<2+>非存在下あるいはカルモジュリン阻害薬(W-7)存在下では一過性再感作現象は消失すること、また、(2)カルモジュリン依存性蛋白質脱燐酸化酵素(ホスファターゼ2B)阻害薬(タクロリムス、シクロスポリンA)存在下でも一過性再感作現象は消失すること、しかしながら、(3)ホスファターゼ1および2A阻害薬(オカダ酸)存在下では一過性再感作現象は消失しないこと、が明らかとなった。以上の結果から、アゴニスト刺激に伴う受容体の一過性再感作機構には、細胞内Ca^<2+>濃度上昇によって活性化されるカルモジュリン依存性ホスファターゼ2Bが関与する可能性が示唆された。
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