N^3-フェナシルウリジンはマウス脳室内投与により強い催眠作用を有する。このウリジン誘導体の中枢抑制作用発現は既存の中枢系受容体が一部関与しているものの特異的な受容体すなわち"ウリジン受容体"を介することが示唆されている。[^3H]N^3-フェナシルウリジンをリガンドとしてシナプス膜への結合実験を行った結果、濃度依存的な特異的結合が認められ、新規ウリジン受容体としてその機能と構造について検討している。本研究では、バイオイメージングアナライザーを用い受容体の存在をより明確した。SD系雄性ラット(体重280-350g)の脳を摘出後凍結、ミクロトームにより20μmの切片を作成した。[^3H]N^3-フェナシルウリジンをリガンドとしてジピリダモ-ル100μM、EDTA 1mM存在下Tris-HCl緩衝液中4℃で反応させた。反応終了後、脳切片を洗浄・乾燥し、イメージングプレートに2〜3週間露光しFUJIBAS-5000によりその放射能を測定した。[^3H]N^3-フェナシルウリジンはラット能切片に濃度依存的に結合することが明らかとなった。また、[^3H]N^3-フェナシルウリジンをラット能切片と4℃、30分間反応させた場合、大脳皮質、海馬、黒質、視床、小脳において[^3H]N^3-フェナシルウリジンの存在が確認された。そこで受容体の諸性質を明らかにする目的でウリジン受容体の精製を試みた。ウシ視床シナプス膜を調整後、CHAPS1%で可溶化した。可溶化画分を[^3H]N^3-フェナシルウリジン10nMと反応させた結果、2.54fmol/mg proteinの特異的結合が認められたことより、上清をセファロース4Bカラムに付した。現在、溶出画分中、ウリジン受容体結合量の高い画分を集めさらなる分離・精製を行っている。 本研究より、ウリジン受容体が核酸誘導体の催眠作用発現部位として機能、存在することが示唆され、これまで我々が提唱するウリジン受容体説を強く支持する結果を得た。今後さらに総合的に検討し、新しいタイプの睡眠薬の開発を行うと共に脳ウリジン受容体の特徴をより明確にし、受容体蛋白質を精製することを目的とする。
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