研究概要 |
ミトコンドリアに特徴的にみられるリン脂質であるホスファチジルグリセロール(PG),カルジオリピン(CL)の生合成の第一ステップであるホスファチジルグリセロリン酸合成酵素の構造と機能を明らかにするため、本年度は本酵素の精製を行った。出発材料として酵素比活性が動物組織と比較して約10倍高かったCHO細胞を選んだ。5x10^<10>のCHO細胞から、ホモゲナイズ、ミトコンドリア画分の調製、Blue-Sepharose,Mono Q,Superdex200,TSK-etherのクロマトグラフィー操作によってホスファチジルグリセロリン酸合成酵素をSDS電気泳動上単一なバンドになるまで精製した。この際酵素比活性の上昇は約19000倍、活性の回収率は0.047%であった。この蛋白の電気泳動上の分子は62kDaであり、分子が20kDa程度である大腸菌など原核生物のものとはサイズが異なっていた。このことから本酵素は新しい構造を有している分子である可能性が考えられた。また精製の過程でホスファチジルグリセロリン酸合成酵素はホスファターゼ活性と完全に分離できたので、CDP-DGからPGが生成するステップで2つの酵素が働いていることが証明された。本酵素遺伝子の単離と遺伝子の本酵素欠損CHO変異株への導入が次年度の課題である。
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