膵臓のアミラーゼ分泌におけるコレシストキニン(CCK)の細胞内情報伝達系制御機構の解明を目的とし、先天的にCCK-A receptor遺伝子を欠損するOLETFラットとそのコントロールであるLETOラットの膵腺房を用いて種々の刺激に対するアミラーゼ分泌反応を比較した。cAMPカスケードを介してアミラーゼ分泌を促進するセクレチン、vasoactive intestinal polypeptideに対する作用は両ラット間に違いは認められず、それぞれのペプチドとホスホジエステラーゼ阻害薬3-isobutyl-1-methylxanthineとを同時に用いた実験においても違いは認められなかった。一方、イノシトールリン脂質カスケードを介してアミラーゼ分泌を促進するアセチルコリンのアゴニスト(carbachol)、neuromedin Cに対してはOLETFラットの方が強い反応性を示した。また、カルシウムイオノフォアであるA23187、アデニレートシクラーゼに直接作用するforskolin、 cAMPの非水解性アナログであるdibutyryl cAMPにおいては違いは認められなかったが、GTP結合蛋白質活性化作用を有するNaFに対するアミラーゼ分泌能はOLETFラットの方が有意に強かった。 さらに詳細な検討を行うため、膵腺房細胞の細胞膜を調製し、種々の刺激に対するcAMP産生能を調べた。セクレチン、vasoactive intestinal polypeptide、forskolinに対する作用は両ラット間で違いは認められなかったが、NaF、GTPの非水解性アナログである5^1-guanylyimidodiphosphateに対する作用はOLETFラットの方が有意に強かった。また、carbachol、neuromedin C、NaFを用いて膵腺房細胞内のCa濃度変化を測定したが、両ラット間で違いは認められなかった。 以上の結果から両ラットの膵腺房細胞のGTP結合蛋白質に量的違いの存在すること、ジアシルグリセロールを介する経路にも機能的な違いの存在することが示唆された。
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