膵臓のアミラーゼ分泌におけるコレシストキニン(CCK)の細胞内情報伝達系制御機構の解明を目的とし、前年度に、先天的にCCK-A receptor遺伝子を欠損するOLETFラットとそのコントロールであるLETOラットの膵腺房細胞またはその細胞膜画分を用いて種々の刺激に対するアミラーゼ分泌能、cyclic AMP(cAMP)産生能を比較した。その結果、dibutyryl cAMPに対するアミラーゼ分泌能、forskolinに対するcAMP産生能に関しては有意な差が認められなかったが、NaFに対するミラーゼ分泌能、cAMP産生能はOLETFラットにおいて増強されていることがわかった。これらのことから、両ラットの膵腺房細胞におけるGTP結合蛋白質の発現量が異なる可能性が考えられた。本年度は、両ラットの機能的相違(アミラーゼ分泌能、cAMP産生能)とGTP結合蛋白質の発現量との関係をさらに明らかにするため、両ラットの膵臓から細胞膜画分を調製し、Western blot analysisによりGsα、Giα、Gβの発現量を比較した。 膵臓の細胞膜画分のWestern blot analysisを行ったところ、両ラットの膵臓におけるGsαおよびGiαの発現量には有意な差が認められなかったが、GβはOLETFラットよりもLETOラットにおいてより多く発現されていることがわかった。これらの結果から、両ラットのアミラーゼ分泌能、cAMP産生能の違いはGβの発現量の違いに起因し、膵腺房細胞においてGβがNaFによるcAMPの産生に抑制的に働き、アミラーゼ分泌を抑制することが示唆された。また、CCKは膵臓におけるGβの発現量を調節することによりアミラーゼ分泌を制御している可能性が考えられた。
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