フッ素系界面活性剤であるペルフルオロ脂肪酸類(PFCA)は齧歯類に強いペルオキシソーム増殖や、肝脂肪蓄積をおこす。本研究者は、ラットに対する作用の強さが炭素数の異なるPFCA間で大きく異なり、炭素数の長いPFCAほど強い作用を示すことを明らかにしてきた。また、ペルフルオ口オクタン酸(PFOA)は雄ラットには効果を示すものの雌ラットには全く効果を示さないという性差があった。このようなPFCAの炭素鎖長、性による差は初代培養肝細胞においては全く認められなかったことからPFCAの体内動態が異なる可能性が示唆されてきた。 本年度はHPLCを用いた微量のPFCA定量法を開発する事によって、GLC法より20倍程度感度が高く、また、GLCでは測定できなかった炭素鎖長の短いPFCAの定量法を開発した。この方法を用いて肝臓のPFCA濃度を測定したところ、炭素鎖長の長いPFCAほど肝臓への残存性が高く、また、PFOAやペルフルオロノナン酸(PFNA)は雌より雄の肝臓に高濃度蓄積していた。血清中のPFCA濃度も肝臓とほぼ同様の傾向を示した。PFCの種類、性によらずPFCAの肝濃度とペルオキシソーム増殖作用の間には高い相関関係が認められた。PFCAの排泄を検討したところ、炭素数7-10のPFCAはいずれも投与後60時間で3-6%が糞中へ排泄され、PFCAの炭素鎖長や性による鎖はほとんど認められなかった。これに対し、尿中ヘの排泄量はPFCA間で大きく異なり、炭素鎖長の長いPFCAほど尿中へは排泄されにくいことが判明した。また、PFCAの尿中排泄はプロベネシドにより阻害された。以上の結果から、炭素鎖長の短いPFCAは尿細管分泌によって体外に排泄されるのに対し、炭素鎖長の長いPFCAはこの輸送系には認識されないものと考えられる。現在、この輸送系の性質を検討中である。
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