研究概要 |
マウスIL-10mRNAに相補的な配列を有するアンチセンスDNA(AS-oligo)の表皮抗原提示細胞への送達性の向上に関する基礎的検討として,ヘアレスマウスの摘出皮膚を装着した水平型核酸セルを用いてAS-oligoの皮膚透過性におよぼすカチオニックリポソーム(CL)の影響をin vitroにおいて検討した. その結果,AS-oligoを単独で皮膚に適用した場合の浸透性は適用6時間後においても全く認められなかった.また,AS-oligoとCLとを会合させるとAS-oligoの皮膚浸透性は増大したが,適用6時間後における累積浸透率は約5%程度と低値であった.さらに,リポソーム中のカオチン性脂質含有量を増大させたり,CLとAS-oligoとの混合比を変えても皮膚透過性の顕著な増大はみられなかった.これらのことから,表皮抗原提示細胞中においてアンチセンス効果を発揮させるためには,CLとの会合体形成だけでは不十分であり,さらなる皮膚透過性の向上を図る方策が必要と考えられた. 次に我々は,外部から皮膚に電圧をかけ能動的な皮膚浸透性の増大を狙ったイオントフォレ-シス(IP)法に注目し,in vitro皮膚透過性におよぼす影響を検討した.なお,IP法はその電気的パターンの違いにより,直流型,交流型などに分類されるが,本研究では皮膚刺激性が低いパルス脱分極型を用いた.AS-oligoをcathod側に添加した場合,電流強度に関わらず皮膚浸透性は全く認められなかったのに対し,anode側に添加すると電流強度およびAS-oligo添加濃度の増加に従い皮膚浸透性は増大し,0.3mA,6時間通電後の累積皮膚浸透率は約60%を示し,IPの優れた効果が明らかとなった.今後,AS-oligo-CL会合体に対するIPの効果,培養表皮抗原提示細胞へのAS-oligoの取り込み,アトピー性皮膚炎マウスにおけるアンチセンス効果について検討する予定である.
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