癌性細胞接着因子アンジオモデュリンの持つ血管新生促進活性は、ヘパリン(Hep)との相互作用によって阻害されることが証明されているが、そのHepの活性に必要な糖鎖上の微細修飾構造は不明である。構造と活性の相関関係を明らかにするためには、構造が明確に分かったHepのオリゴ糖が必要である。既に、多数の硫酸化二〜六糖が得られているので、今年度は八糖について解析した。ブタ小腸粘膜由来のHepをヘパリナーゼで徹底消化し、ゲルろ過によって八糖画分を得た。この画分をポリアミンカラムを用いたHPLCによってさらに細かく分画した。各画分について、各種酵素による消化物のHPLC分析や500 MHz ^1H NMR解析などによって構造を決定した。その結果、3種類の新規の硫酸化八糖の構造を明らかにすることができた。この研究成果の一部は学会で報告し、現在論文を作成中である。 アンジオモデュリンと種々のHep/ヘパラン硫酸(HS)との直接の結合についても調べた。^3Hで放射標識したHep/HSについて、ニトロセルロース膜用いた結合実験を行い、アンジオモデュリンとの相互作用に必要な硫酸化修飾構造に関する情報を得た。さらに現在、培養細胞をもちいて、実際にアンジオモデュリンが血管新生促進活性を示す際におけるHep/HSの影響についても調べている。血管新生とアンジオモデュリンとの関連が知られている細胞(ヒト臍帯由来ECV304細胞)を培養し、培地中に種々のHep/HSを添加して細胞の血管様構造の形成能を顕微鏡下で観察している。Hep/HSの添加と血管新生活性との関係を調べ、上述の結合実験で得られたアンジオモデュリンとの相互作用に必要な硫酸化修飾構造との相関性を検討中である。
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