研究概要 |
フラーレンの生体に対する影響を調べる目的で,界面活性剤ポリビニルピロリドンで可溶化したC_<60>水溶液を用い,in vitroのアッセイ系でラット,マウス細胞に対して骨分化促進活性を見いだした.これに,軟骨に含まれるムコ多糖類を共有結合を用いて結合させ,軟骨細胞に親和性を持たせて活性を向上させることを目的とし,誘導体の合成を試みた.C_<60>とアセチルグルコサミンとを直接的に共有結合で結合させることは困難であると考えられたため,まず,C_<60>に反応性の高い官能基を導入することにより,活性の高いC_<60>誘導体(以下,活性型C_<60>とする)を設計し合成した.すなわち,アミノ酸とアルデヒド誘導体とC_<60>とを反応させることにより1,3-双極子付加反応を経てピロリジン骨格を有する付加体(フレロピロリジン)を得た.反応過程は高速液体クロマトグラフィーにて追跡し、生成した付加体はカラムクロマトグラフィーにて精製し、^1H-および^<13>C-NMRにて構造決定を行った。その結果、付加体はモノ付加体であり、C_<60>上での付加は6員環と6員環との縮合部であり、6,6-closeの形式であることが分かった。用いるアミノ酸とアルデヒド誘導体の側鎖を変えることにより,四種の活性型C_<60>(ジメチルフレロピロリジン,ジフェニルフレロピロリジン,ジベンジルフレロピロリジン,および無置換のフレロピロリジン)を合成した.このうち,ジフェニルフレロピロリジンおよび無置換のフレロピロリジンを用いて,イソシアナ-ト基を有する化合物とスルホン酸クロライド基を有する化合物との反応性を検討した.その結果,ジフェニルフレロピロリジンを用いた場合,ピロリジン環の二級アミンの活性が低く,活性型C_<60>としては有用ではなかったが,無置換のフレロピロリジンを用いた系では反応がよく進み,活性型C_<60>としての有用性が期待された.
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