本年度は日米の医療価格および医療消費量の比較についての文献および資料検討を行った。医療価格の差については、OECDによって医療の購買力平価が算出されている。1993年のデータでは、一般的な財全体で算出した購買力平価(GDP-PPP)は\1=184.3円、医療のみの購買力平価(MED-PPP)では\1=71円となっており、日本は医療価格が他の財と比べて相対的に安いことが示されている。しかしながら、これは全年齢層を対象とする医療費であり、アメリカでは統一的な価格制度は存在しない。高齢者の医療の比較に関しては、アメリカでもメディケアの制度があり、パートA(入院保険)では診断群ごとの病院費用償還額が、パートB(補足的医療保険)では医師による医療行為ごとの報酬が定められているため、これを日本の老人保健診療報酬点数表と比較することにより、高齢者の医療価格の比較が可能と考えられる。パートBのFee Scheduleと日本の点数を診察・指導について比較する試みはなされており、両国でほぼ同等の価格であることが示されている。そこで、価格については毎年改定されFederal Registerに掲載されているアメリカのFee Scheduleと日本の診療報酬点数表を用い、医療行為別の消費量については、日本では社会医療診療行為別調査の老人医療受給対象者分、アメリカではメディケアパートBの医療行為別実施回数を米国研究者の協力を得て調べ、価格と消費量についての比較を行う予定である。また、OECDによる購買力平価指数の算出方法として、それぞれの国の消費パターンを基準としてラスパイレス型とパ-シェ型の価格指数を算出し、そこからフィッシャー型の価格指数として算出していることから、両国の点数表から診療行為が類似しているものを抽出することにより高齢者医療の比較のための価格指数の算出を試みることを検討中である。
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