研究概要 |
現在までに,IV期非小細胞肺癌11症例でカルボプラチン投与後に内因性トロンボポエチン(以下TPO)濃度の測定を終了した。 1.TPO濃度と血小板数の変動:全症例で投与前(day 1)からTPO濃度(fmol/ml)は測定可能であり(1.88±1.00),この値は健常成人でのTPO濃度(0.76±0.26)に比べ有意に高値であった。TPO濃度はday 4から急激に上昇し,day 15で最高値を示した後に低下しday 29にほぼ治療前(day 1)の値を示した。一方,血小板数はday 10より徐々に低下し,day 19で最低値を示した。 2.TPO濃度の変動とマルボプラチンの薬物動態パラメーター及び血液毒性との関係:血中蛋白非結合型プラチナ(UF-Pt)の濃度-時間曲線下面積(AUC;Area Under the Concentration versus time curve)とTPO濃度の最大増加率(TPO濃度最大値/TPO濃度前値)との間には有意な正の相関がみられ(r=0.76,p=0.019),カルボプラチンはAUO依存性にTPO濃度に影響を与えていると推測された。またday 8以降のTPO濃度の増加率(day8,10,12,15でのTPO濃度/TPO濃度前値)と血小板最低値との間には有意な負の相関がみられ(r=-0.83,p=0.009),カルボプラチン投与後のTPO濃度を測定することで,あらかじめ血小板減少を予測できる可能性が示された。さらに詳細なTPO濃度の変動とカルボプラチンの薬物動態・薬動力学的解析のため症例蓄積を継続中である。 3.カルボプラチン薬物動態のpopulation pharmacokinetics解析:予備的検討として既に有していた45症例のカルボプラチン薬物動態データを用いてAUCを正確かつ簡便に予測するモデル式を作成した(カルボプラチン投与開始後3時間のUF-Pt濃度をC_3とすると,AUC=0.93×C_3+0.47)。この45症例に本研究の11症例のデータを用いて,NONMEM(nonlinear mixed-effect model)の手法により,現在カルボプラチンクリアランスを予測する式を作成中であり,さらに予測式の精度を高めるため症例蓄積中である。
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