先年度明らかになった、アミノ酸輸送担体の基質認識生について、in vitro実験系を用いてさらに検討を行った。先年度においてはタイロシンのアミノ基にグルコースを結合させた化合物は糖輸送担体に対する認識性は失うが、アミノ酸輸送担体に認識されていることが示唆されているが、実際にアミノ酸輸送担体に認識されて脳毛細血管に取り込まれているか否かについて本年度は、in vitro培養細胞系を用いて検討を行った。その結果、タイロシンのアミノ基にグルコースを結合させた化合物そのものの細胞内取り込みが観察された。また、タイロシンのアミノ基にグルコースを結合させた化合物は、アミノ酸であるタイロシンの取り込みを濃度依存的に阻害し、また、その阻害形式を検討したところ競合阻害の形式であることが明らかとなった。このことから、アミノ酸のアミノ基をアルキル修飾した化合物は、担体認識性を有し、輸送担体により細胞内へ取り込まれることが示唆され、本手法を用いて、細胞膜透過性改善が行えることが示唆された。さらに、興味深い結果として、タイロシンのアミノ基にグルコースを結合させた化合物は、N-メチルタイロシンを用いたときよりも強くタイロシンの取り込みを阻害した。アミノ基を修飾する基の炭素数が多くなると阻害効果が増加する原因として、炭素数の増加により立体障害性は増加するけれども、炭素鎖の増加に起因する電子供与性の増加により、アミノ基の窒素原子上の非共有電子対の局在性が増加し、アミノ基がよりプロトネーションされやすくなっているためであると考えられる。本知見は、アミノ酸のアミノ基の修飾に関して重要な情報となると考えている。
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