本研究年度は、ラット摘出小腸粘膜を用いたin vitro Ussing chamber systemおよびCaco-2培養細胞systemの2つの実験系により消化管上皮細胞上に存在する有機アニオン排出担体の輸送特性を検討した。有機アニオンのモデル薬物としてcalceinおよびその脂溶性誘導体calcein-AM、probenecidの3種を使用した。両実験系においても、生理的な条件下では用いたモデル薬物は血管側(側底膜側)から管腔側(刷子縁膜側)への輸送速度(Jsm)の方が管腔側(刷子縁膜側)から血管側(側底膜側)への輸送速度(Ims)より高い値を示した。Calceinを用いてJsmに関するsaturation kineticsを検討したところ0.5mM以上でほぼ一定の値となることが明らかとなり、またこの輸送は他の有機アニオン性薬物の存在下あるいはATP枯渇条件下で阻害を受けた。しかしながら、代表的なP-glycoproteinの基質であるverapamil存在下では阻害を受けなかったことから有機アニオンの排泄に関与している輸送担体はP-glycoproteinとは異なる新規な輸送タンパク質である可能性が示唆された。この輸送タンパク質は、近年肝臓よりそのcDNAが単離されたcanalicular multispecific organic anion transporter(cMOAT/MRP2)とアミノ酸配列レベルあるいは塩基配列レベルで比較的homologyが高いのではないかと推察しており、来年度はこの輸送タンパクのcDNA cloningを視野に入れて研究を進めていく予定である。
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