昨年度の研究に引き続き、有機アニオン性化合物calceinおよびcalcein-AMをプローブとして用い、Caco-2単層細胞における透過性を検討した。Calcein-AMは非常にユニークな特性を持つ化合物であり、そのままの形では非蛍光性でかつP-glycoprotein(MDR1)の基質として認識されるが、加水分解を受けcalceinに変換されると非常に強い蛍光を発しかつmultidrug resistance associated protein (MRP)-like protein(MLP)の基質として認識される。この性質を利用し、本研究ではcalcein-AMをCaco-2に取り込ませた後の蛍光強度を追跡することによりCaco-2のMLP活性を検討した。その結果、Caco-2細胞においてもラット消化管上皮と同様比較的強いMLP由来の輸送活性が認められ、これはprobenecidにより阻害された。また、この輸送活性はcytochrome P-450代謝酵素の誘導剤であるphenobarbitalにより制御されている可能性も示唆され、現在この機構に関しても分子生物学的手法を用いて検討中である。 一方、P-glycoprotein(P-gp)の輸送活性が非イオン性界面活性剤Cremophor ELにより阻害される機構についても検討課題とした。その結果、P-gpのCremophor ELによる阻害は非競合的であることが明らかになるとともに、消化管に存在しているoligopeptide transporter(PepT1)やNa^+-dependent glucose transporter(SGLT1)の輸送活性には影響を与えていないことも明らかとなった。今後、Cremophor ELが他の1次性能動輸送担体に影響を及ぼしているか否かに関しても検討を行う予定である。
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