近接した時期における血栓症発現の、予知的指標について研究を進めた。 1.実用的な血栓症関連自己抗体測定系の確立 血栓症発現に関連が深く、臨床上有用な自己抗体である、抗ヘパリン抗体および抗酸化LDL抗体の測定系を、ELISA法により確立した。これらは簡便であり、再現性も高く、現在自己免疫性疾患を中心とした臨床症例に応用中である。 2.血栓症予知の臨床研究システムの確立 血栓症発現例、および、ごく近い将来の血栓症発現のハイリスク群である動脈硬化症、糖尿病、自己免疫性疾患(抗リン脂質抗体症候群、SLEなど)などの症例について、経時的にPT、APTT、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、α2-PI、アンチトロンビンIII、FDPなどの凝固線溶系の測定項目と、トロンボモジュリン、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体、プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体などの凝固線溶系の分子マーカーを中心に検索した。これらのうち、抗リン脂質抗体症候群やSLE症例の血栓症発現とトロンボモジュリン値の動態について、その測定値の上昇と血栓症発現の関連を剖検症例について検討した。それによると、血栓症発現例では、トロンボモジュリン値の血中濃度と、組織中の存在量が概ね反比例することが免疫染色で確かめられ、したがって、トロンボモジュリン値の高値が血栓症発現の予知的指標となることを確認できた。このことは平成9年10月の臨床病理学会総会にて発表した。 3.マウスハイブリドーマによる抗ヘパリンおよび抗酸化LDLモノクローナル抗体の採取 このことについては現在採取条件を検討中である。
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