研究概要 |
フローサイトメーター(R-3000、Sysmex)にパルスレーザーとCCDカメラを取り付けることでフローセル中を流れる細胞の画像を撮影できる装置(flow imaging cytometer,FIC)を用いて、全血を用いた血小板凝集能装置としての応用を試みた。 血液中には白血球、赤血球、血小板が存在するが、細胞の大きさ(前方散乱光強度)とRNA・DNAを染色する蛍光色素オーラミン0の蛍光強度を組み合わせることにより血小板を他の細胞と大まかに区別することができるようになった。更に、血小板凝集塊は単一血小板に比べて相対的に前方散乱光強度および蛍光強度が増加するので、対角線上に画像取り込み領域を設定する事で効率よく血小板凝集塊の検出ができるようになった。 この測定系を用いてADP、エピネフリン、セロトニンなどのアゴニストによる血小板凝集の生成を観察した。現在広く用いられている血小板凝集能測定法(吸光度法)と比較すると、凝集塊の検出感度は10倍以上であり、数個の血小板からなる凝集塊も検出することができた。特に、セロトニンは血小板凝集惹起作用が弱く吸光度法では測定ができなかったが、100nM程度でも血小板凝集が生成していることを検出できた。 塩酸サルポグレラートはセロトニン受容体の拮抗阻害剤として慢性動脈閉塞症に使用されているが、セロトニン惹起血小板凝集が吸光度法では測定できないことから、他のアゴニストとの同時添加により増強される血小板凝集に対して抑制作用を評価していた。FICを用いることで、セロトニン単独刺激により惹起された血小坂凝集に対する塩酸サルポグレラートの抑制作用を評価することができた。 また、臨床検体を用いた検討では、急性心筋梗塞患者(2例)の流血中に血小板凝集塊が生成していることを静脈血を用いてin vitroで確認することができた。今後は、疾患の例数を増やすと共に、治療に伴う変化について、詳細な検討を加えていきたい。
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