抗肝腎ミクロソーム抗体1(LKM1)の抗原であるチトクロームP-450IID6のより特異的で高感度な自己抗体測定法の開発において平成9年度に引き続き、Radioligand assayによる測定法の開発も試みた。プラスミドに組み込んだヒトトトクロームP-450IID6を大量に調整し、T7ファージのRNAポリメラーゼと網状赤血球抽出液からの蛋白翻訳系をつかって細胞胞下で^<35>S-メチオニンでラベルを入れたチトクロームP-450IID6を合成する。これを検体と液相で反応させ、できた抗原抗体複合体を分離し、放射活性で測定する方法である。この方法は得られる蛋白量の少ないのが欠点であるが、高次構造を保ちうることと得られる蛋白のほとんどすべてがP-450IID6由来でありるため非特異反応が少ないことが期待される。この方法で自己免疫性肝炎(AIHスコアが10以上)28例、B型慢性肝炎25例、C型慢性肝炎24例、他の全身性自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、SLE、MCTD、SSc)27例、健常者50例について血清中の抗P450自己抗体を測定した。強陽性例の値を内部標準としたインデックスで値を表現することとし、健常群の測定値からカットオフ値を2.3と設定した。このとき自己免疫性肝炎中の15例が陽性(2例強陽性、13例弱陽性)であった。測定値はAIHスコアとは相関がなかった。他にC肝の5例(強陽性2、弱陽性3)、B肝-弱陽性3、全身性自己免疫疾患で弱陽性8であった。弱陽性例では考えられなかった。しかしながら、健常者の測定値とは明らかに分布が異なっており、この非特異反応がいかなる意味を持つのかについて今後の検討を要すると考えられた。
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