|
ヒトの正常な多能性造血幹細胞は多重染色フローサイトメトリーではCD34陽性/CD45弱陽性/Thy-1(CD90)陽性の細胞分画に含まれることが明らかになってきている。一方、急性白血病に代表される造血器悪性疾患に関して当方でフローサイトメトリーにより腫瘍細胞の表面抗原解析を行ったところ、急性骨髄性白血病(AML)症例の約40%および急性リンパ性白血病(ALL)症例の約60%において、腫瘍細胞自身にCD34抗原が発現していることが判明した(CD34陽性急性白血病:CD34(+)acute leukemia)。このため多くの急性白血病患者において、選択的CD34陽性造血幹細胞移植を用いた根治的超大量抗癌化学療法が施行できないことが判明した。そこでこれらの患者の腫瘍細胞自身にThy-1(CD90)抗原が発現しているかどうかを、抗Thy-1(CD90)抗体と抗CD34抗体とを用いた二重染色フローサイトメトリーにより検討した。その結果、de novo CD34陽性AML症例の約4%およびde novo CD34陽性ALL症例の約18%で腫瘍細胞がThy-1陽性/CD34陽性であることが判明した。一方、慢性骨髄性白血病(CML)や骨髄異形成症候群(MDS)に由来する二次性急性白血病患者では、de novo症例と比較して腫瘍細胞がThy-1陽性/CD34陽性である頻度がより高率であった。このことから、特にde novo CD34陽性AML症例では選択的Thy-1陽性造血幹細胞移植が有用である可能性が考えられた。さらに一部のCD34陽性急性白血病細胞では、正常のCD34陽性細胞に比べてCD45抗原の発現が著しく弱いことが判明したため、これらの症例における選択的CD45陽性細胞移植の可能性について今後検討の予定である。
|
