研究概要 |
近年、ダウン症出生危険率の算出に母体血を用いる方法が報告され、これは、α-フェトプロテイン(AFP)とヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)およびエストリオール(E3)の三成分の測定値と体重、家族歴などのファクターをもとに算出するものである。現在までに、これら三項目の測定は市販のイムノアッセイキットを用い個別に行われているが、この方法では必要な検体量や経費等の問題から一般的なスクリーニングには不向きである。本研究は希土類イオンキレートの特性を生かした時問分解蛍光イムノアッセイによる上記三成分の同時測定法の開発を行い、臨床診断に役立てることを目的とし、本年度は以下の成果を得た。 1)標識抗体(抗原)の調製:Euキレート標識化抗AFP抗体及びSmキレート標識化抗hCG抗体は特異抗体をEu(Sm)キレート標識剤と反応させ調製した。また,Euキレート標識化E3はE3-ウシ血清アルブミン複合体(E3-SA)を標識抗原として調製した。 2)測定法の確立:Euキレート標識化E3-BSA,ウサギ抗E3抗血清、スタンダードを抗AFP抗体と抗hCG抗体を固相化したマイクロタイタ-プレートに添加し,第二抗体固相化Transferable Solid Phase (TSP)プレートで覆い、免疫反応後,両プレートを洗浄し,マイクロタイタ-プレートにはEuキレート標識抗AFP抗体溶液及びSmキレート標識化抗hCG抗体溶液を加えた後放置する。再洗浄後,蛍光増強試薬を加えSmとEuの時間分解蛍光強度を同時に測定する。一方TSPプレートは蛍光増強試薬を添加したマイクロタイタ-プレートに移しEu活性を測定する。確立した方法によるそれぞれの検量域は妊婦の血中濃度範囲を十分カバーするものであった。次年度は本法の臨床での有用性について検討する。
|