Helicobacter pyloriの病原因子として、一部の株が保有するcag pathogenicity island(cagI)による宿主胃粘膜上皮細胞からの炎症性ケモカイン interleukin-8(IL-8)誘導能が注目されている。今回、福岡大学病院で得られた臨床分離株について、胃癌細胞株からのIL-8誘導能とcagI保有の有無およびcagI保有株間でのIL-8誘導能の差異について検討を加えた。IL-8誘導能の測定については、既報に従い、菌株と胃癌細胞株(AGS)を一定時間培養し、培養液中に放出されたIL-8をELISA法により定量した。また、cagI保有株の中で、抗CagA抗体を用いたWestern blot法によるCagA蛋白の多様性および既報のcagI遺伝子配列に基づき作成したprimerを用いたPCR法増幅遺伝子断片の制限酵素切断パターンの比較によるcagI遺伝子の多様性を検討した。その結果、臨床分離株におけるIL-8誘導能はcagI陽性株と陰性株では20倍以上の差が認められた。一方、分離株の空胞化毒素活性の有無とIL-8誘導能との間には相関を認めなかった。また、cagI陽性群の中でも最大で約5倍のIL-8誘導能の差異を認めた。今後、IL-8誘導能とCagA蛋白およびcagI遺伝子の多様性との関連、さらにcagIの多様性と疾患(胃・十二指腸潰瘍、胃癌)との関連について検討を加える予定である。
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