本研究の目的は、1)患者のQOLと満足度の自記式調査紙と患者の記録物からの2つの方法による調査、2)精神病院の設置主体や規模等の違いが患者のQOLと満足度にどのように関連しているかを明らかにすることであった。患者のQOLとケアの満足度に関する調査用紙は、米国で使用されたBASIS32とperception of careを日本語訳し、さらにバックトランスレーションをして日本語版を作成したものを使用した。また自分の健康に対しての認識を日本語版が作成されているSF36を用いた。昨年度に引き続き東京都内公立病院をフィールドにし、今年度はさらに三重県の公立病院、大阪府内の私立精神病院をフィールドに調査を実施した。急性期の精神分裂病入院患者を対象に、そのQOLと満足度の調査を実施したが、データについては現在集計中である。米国での調査では急性期の精神分裂病患者のみに絞っても対象数の確保が可能であったが、日本国内の施設では精神分裂病急性期患者だけに対象を絞ると、十分な対象数が得られないため、現在までの結果を集計するとともに、さらに対象を広げての調査を検討中である。また、現段階では米国の医療システムと我が国のそれとではあまりにも保険制度等が違うため、当初は入院期間の違いによっての比較を試みる予定であったが、精神科医らを交えた本研究への示唆では、我が国の状況を十分鑑みた分析を行う必要性を指摘され、現在詳細な医療看護の質の側面について分析方法を検討中である。
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