研究概要 |
産後の母性健康支援システム構築の基礎的研究として、産後の保健行動の分析を行った。即ち、産後1か月,3か月,6か月の時点で「予防的保健行動」の尺度ならびに「生活行動に対する保健行動の優先性」の尺度を使用して継続的な追跡調査を行い、以下の結果を得た。 1.産後1か月と3か月の保健行動は各項目とも一致した傾向を示し,この間の新生児〜乳児期の児の発育に対応して,母親の保健行動が大きく変容することはなかった。ただし,産後3か月になると睡眠の改善がみられ,乳児の生活リズムが次第に確立されつつある状況を反映したものと考えられる。 2.産後1か月の女性はまだ産褥期間中であり,日常生活行動には制約をうけるところも少なくない。産後3か月になって運動に関する3項目中2項目の実行率が有意に上昇している事実は,自分白身の行動制約からの解放・体調の回復という産後の生理的経過を反映しているものと考えられる。 3、産後6か月まで追跡し得た事例からみて,産後1か月,3か月の保健行動と大きく変容することはなかった。ただし,産後3か月までは高い実行率を示していた飲酒の抑制が低下傾向を示した。 妊娠中に飛躍的に向上した保健行動は産後も持続しており,児の発育に対応して大きく変容することはなかった。このことからも妊娠中に保健行動を高めておく意義は大きく,妊娠中は健康教育にとって極めて重要な時期であり、より一層の充実をはかる必要がある。さらに、産後の保健行動は養育行動によって大きく規制され,自らの健康に対する配慮よりも児に対する養育行動が優先されがちである。自らの健康に対する保健行動を変容・促進するためには地域的な育児支援システムを構築する必要があり、産後の女性からの二一ズも極めて高いことが判明した。
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