研究概要 |
1.文献検索からの知見:過去10年間の国内0文献の検索では,保健婦に臨床経験を持つものが少ないことに関する意見はいくつかある。しかし,保健婦の臨床経験の有無が,保健婦の地域での看護活動に影響するかどうかに関する研究報告は見当たらなかった。また,市町村保健婦として働いている者の中で臨床経験を持つ者の割合についても明確な数値は得られなかった。保健婦に必要と思われる援助技術・援助方法については,現在出版されている保健婦の教育課程の教科書で検討中である。 2.市町村保健婦との聞き取り調査からの知見:保健婦の個別援助過程(家庭訪問)において必要とされる援助技術・援助方法について予備的な聞き取り調査は継続中であり,まだ一般化できないが,臨床経験のある保健婦と臨床経験のない保健婦それぞれ1名に面接調査を実施した結果から,対象である個人を含む家族全体に対する援助機能,および他機関との連絡調整機能が重要であり,そのためにはコミュニケーション,面接,およびカウンセリングの技術が必要であることがわかった。 3.在宅高齢者における調査からの知見:市町村保健婦の個別援助の目標である援助対象者のQOLの向上と保健福祉サービスの関係について調査し,結果の一部を第56回日本公衆衛生学会にて発表した。保健婦の家庭訪問を含む保健福祉サービスの利用はADLの比較的自立した在宅高齢者では,QOLを低める方向に寄与していた。 今後,更に市町村保健婦からの聞き取り調査を進め市町村保健婦に必要と考えられる援助技術の項目を抽出する。そして,抽出された項目から調査票を作成し,数量的な調査を実施し,市町村保健婦が実際に必要と感じている援助技術と臨床経験の関係を明らかにする予定である。
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