研究概要 |
前年度に行なった,水銀・電子・鼓膜体温計による測定結果の傾向比較,相違点,測定部位別の比較,手技による結果を検討した.対象80名,平均年齢5.8歳(0か月〜23歳),平均環境温度26.6℃,総測定回数5760回.鼓膜体温計は国内で入手可能な6メーカー6種類(A,B,C,D,E,F)を使用した.水銀・電子体温計は共に平均体温36.4℃(腋窩温)で,鼓膜体温計の平均値(℃)±S.Dは,A:37.5±0.36,B:36.5±0.38,C:36.4±0.28,D:37.1±0.46,E:36.6±0.47,F:35.9±0.35だった.水銀・電子体温計の腋窩温との検定では,Cが有意差がなく,腋窩温と近似値を示す傾向だった.Fは6種類中8000円と最低価格だが,平均値で-0.5℃と低値傾向のため,家庭・臨床で用いる場合にも十分な注意が必要と考えられた.鼓膜体温の測定には,価格が約7万円の米国製鼓膜体温計Aが,平均値で+1.1℃と最も中枢温に近い傾向を示した.また,これらの体温計別の傾向は発熱時(38.0±0.5℃)でも同様だった.以上から小児を対象とした体表温測定の場合,cost effectiveの視点からも鼓膜体温計のB,C,D,E,より中枢温を求める場合にはAと判断した.また,鼓膜体温の測定手技によって結果にばらつきが生じた.理由として外耳道への挿入角度が一定せず,外耳道温を測定している可能性が考えられた.鼓膜体温測定のトレーニングを受けていない人が測定する時は,耳たぶを下に引いて連続して3回以上は測定すること,その時の最高値を選ぶことが正確な測定には不可欠だと考えた. 電子体温計の代替として,ゴム製吸盤を改良し,鼓膜体温計の先端に装着して前額・腋窩・口腔で体温測定を試みたが,外耳道のように筒状の部位ではないために赤外線センサでの感知が困難であり,測定の安定性・再現性がなかった.そのため現在,電気電子工学者の協力を得て,先端部分の改良に取り組んでいる.また,以上の研究成果は看護学関係の学会・学術論文へ発表するために作業が進行している.
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