単科の精神病院内科外来に通院する糖尿病患者17名および同伴する家族を対象に、1996年5月から受診待ち時間を利用して継続的なケアを行っている。その内容は、(1)食事や活動などの生活の状況および病気に関する認識や感情について傾聴する、(2)患者の精神・身体状況と治療についての情報を把握する、(3)(1)と(2)に基づいて市販の視覚的な教材を用いて療養に必要な知識の教育及び指導をする、の3つの柱からなる。1996年1月から1997年12月までの2年間を6ヶ月毎の4期にわけ、血糖コントロール状況の変化と通院及び検査の定期性を指標としてケア開始前の1期とその後の2〜4期を比較してケアの効果について分析した。血糖コントロール状況は、主として各期のヘモグロビンA_<1C>が7%未満を良好域、7%以上9%未満を注意域、9%以上を不良域とした。通院及び検査の定期性は、通院と検査ともに規則的にしているものをRR、定期的に通院するが検査ができないことがあるものをRI、通院は不定期であるが受診時には必ず検査をしているものをIR、通院と検査ともに不規則なものをIIとした。分析の対象者は1年未満の死亡、転院、入院継続中各1名と新規2名を除く12名(男3名、女9名)である。分析の結果、4期を通して良好域かつRRであるA群3名、一時的に注意域になることはあるが短期間で良好域に戻る者と全期間を通して血糖コントロール状況または通院及び検査の定期性が改善した者を含むB群5名、RRで全期間を通して血糖コントロール状況に改善がみられないC群2名、IIで注意域または不良域であるD群2名の4群に分類できた。次年度以降は今年度に導入した血糖コントロールの検査機器による糖尿病の管理状況の十分な把握を行うとともに、事例の分析とケアの効果が認められるA、B群と認められなかったC、D群を比較検討しながら、体験に基づく糖尿病教室を開催してケアの効果をさらに検討する予定である。
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