近年経口摂取困難な進行癌患者に対し、QOL向上を期待して在宅中心静脈栄養(以下HPNとする)が行われる機会は増えつつある。QOLの向上を目的として癌患者にHPNを導入していくためには、導入や管理に伴い患者及び家族がどのような不安や困難を抱えているのかを把握し、実際に意義のある治療となるように、患者や家族のニードに対する適切なケア提供を十分に検討していく必要がある。そこで、本研究では、HPNを行う進行癌患者及び家族の生活実態を把握し、ニードを明らかにすることを目的とし、参加観察およびインタビューによる調査を行っている。これまでの調査における対象は、2大学病院でHPNを行う患者12例で、年齢28〜92歳の男7例女5例である。疾患は全て消化器癌で、男2例を除く10例は遠隔転移を伴った進行癌である。 現在は、対象から得られたデータを、個別に分析し、ニードや影響要因をHPN導入期、維持期に分けて抽出しつつある段階である。対象は、告知の状況、社会的役割、家族構成、ADLの自立の程度等において様々にことなっているが、導入時および導入後にみられる患者や家族のケアニードには、HPN管理(IVHの種類、輸液の投与時間)、症状、受け止め、性別、職業、サポートなどがニードに影響を与える共通要因としてあらわれている。今後は、さらに事例を積み重ね、十分な実態調査に基づいて、個別のニードや影響要因を把握してゆく。そして、それらの積み重ねから共通してみられるニードや影響要因を導いていく予定である。
|