平成9年度の研究の概要は次の通りである。 1.出産後の褥婦に産痛に関する事柄について聞き取り調査を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)母親学級等の出産前教育や知人、妊婦向け雑誌から産痛に関する情報を得ていた。 (2)出産前には産痛に対して、心配や不安を抱き、非常に強い痛みであると想像していたが、一方では、何とかなる、自分は乗り越えられるというイメージをも持っていた。 (3)実際体験した産痛に対して、「想像以上に痛かった」との感想を持っていた。同時に産痛を通して、こどもへの愛着や親としての自覚、女性性の認識、自分自身への自身などを感じており、産痛に意味や意義を見い出していた。 (4)「出産が進行するに従い、痛みと痛みの間隔が短くなることは知っていたが、痛みの強さが増すことが知らなかった」など分娩の進行に伴う産痛の変化についての認識が不足していた。 2.対象施設での産痛の教育は、母親学級の中で行われていた。主に、分娩経過の説明に付随する形で産痛についての説明がされていた。児を生み出す不可欠な力であること、強い痛みではあるが、心構えや呼吸法、リラックス法が痛みの緩和に効果をもたらすことなどが説明されていた。但し、指導する助産婦によって、強調点、説明に使用する媒体などには違いが見られ、同一施設内でも産痛の教育は助産婦の考えが反映した内容となっていた。 3.第38回日本母性衛生学会学術集会(平成9年10月17日・鹿児島市)において、関連研究「助産婦の産痛の捉え方とケア行動」の口頭発表を行った。
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