大学におけるキャンパス精神衛生活動及び保健所における地域での精神衛生活動の事例を主たる対象として、事例化過程における社会的関係性の変化について調査を行った。大学における精神衛生活動においては、事例化過程そのものが複雑化するーすなわち、他者による相相談などから援助活動が始まるー事例は、精神病圏の事例に比較的限定されていた。この際に何らかの事件を発端に相談が開始されていたとしても、あまり利害関係の強くない学生同士、あるいは教職員との関係がこじれることは少なかった。一方で、大学には、休学、退学、あ名いは除籍という形での大学そのものとの関係性に変化が派生し、これらが学生としての転帰に関連していることが示唆された。このため援助側にとって、大学と学生の関係を保持すべく、学内のサポートチームを作ることが必要とされていた。 また、地域における事例の場合は、精神病圏に限らず事例化過程で他著の関与が見られることが大学に比して多かった。ことに近隣住民との利害関係に夜来する相談から始まる事例などでは、元来社会的に没交渉であった精神障害者あるいはその家族と、近隣住民との関係の悪化が退院後の精神障害者の生活に及ぼす影響は大きかった。また、家族と精神障害者の関係性も、精神障害者の予後に影響を及ぼすことが知られているが、このような関係性の修復などに力点を置いた援助的介入が地域の保健婦によりなされていることが示唆された。
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