1.目的 食品の調理、加工、貯蔵には一般に加熱操作が使われている。加熱操作は独特の風味や食感を作り出し、殺気にも欠かせない。その一方で、加熱操作は栄養成分や風味の劣化などを伴い決して理想的な方法とはいえない。本研究では、2種類のタンパク混合溶液に加圧処理を施し、高圧下における疎水性水和現象と物性変換との関係について実験的に検討することを目的とした。 2.方法 スキムミルク溶液を12.5%、25%、30%、40%に調製し、絹フィブロイン溶液、卵白、豆乳をいずれも6%に調製した。試料はスキムミルク溶液と絹フィブロイン溶液(卵白あるいは豆乳)をそれぞれ1:1に混合したものを用いた。蔗糖を8%添加した試料も併せて調製した。 試料を直径2.5cmの円筒形のポリエチレン製の袋に詰め、圧力400MPa、温度を5℃とし、10分間加圧処理を施した。高圧発生装置は、三菱重工業製MFP-4000を用いた。 ゲル化しなかった試料についてはコーンプレート型回転粘度計を用いて粘度の測定を行い、ゲル化した試料はクリープメーターを用いて破断特性の測定を行った。測定温度は5℃とした。 3.結果 スキムミルク溶液濃度12.5%では絹フィブロインと混合した系のみがケル化し、スキムミルク溶液20%で卵白と混合した系もゲル化した。スキムミルクと豆乳を混合した系はゲル化しなかった。加圧ゲルの破断特性値を比較すると絹フィブロインと混合した系がもっも硬いゲルとなった。絹フィブロインが卵白、豆乳を比較すると、絹フィブロインはスキムミルクのゲル形成を促進させる方向が働くが、卵白と豆乳はゲル形成を阻害する傾向がみられた。蔗糖の添加はゲル化を促進し、ゲル強度を高めた。2種類のタンパク混合溶液の加圧処理と加熱処理の違いをみると、加圧処理ではスキムミルクに絹フィブロインを混合した試料のみがゲル化した。一方加熱処理でゲル化した試料はスキムミルクと卵白の混合溶液のみであった。
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