本研究は、現代青年の性(sexuality)の形成に関わる諸事象の実態を明らかにし、学校教育および家庭教育に資することを目的とする。調査方法として、高校生を対象とする質問紙調査をとり、現在、実施・分析中である。調査項目は、性役割観、性規範・性意識および性行動、学校で受けた性教育内容、マス・メディア等の性情報の受容・認識の様態、メディアを使用したコミュニケーション状況、将来展望を含めた生活意識や価値観、学校・家族・友人関係といった、性の形成に関わる環境要因であり、以上を包括的に検討している。 先行研究によって9割を越える高校生が「学校では性教育を受けたことがある」と認識していることが明らかになっているが、その主要な教科には、保健体育と家庭科が考えられる。そこで調査と並行して高等学校家庭科の教科書(家庭一般、主要4社6冊)の内容分析を行ったところ、保育の領域において、精通現象や月経などの二次性徴、結婚、妊娠・分娩・産褥、家族計画・避妊(受胎調節)・人工妊娠中絶について言及されていた。(1冊のみ、二次性徴に触れられていない)。人工妊娠中絶に関わって、全冊、優生保護法に触れられている一方、避妊の方法について具体的に掲載されていたのは2冊にすぎなかった。性的行為の当事者という点では、高校生に対してきわめて慎重な態度を示しているといえる。家庭科の教科書においては、以上の記述は基本的に「保育」につながるよう構成されているので、性(sexuality)に関わって、それ以上多様な言及はほとんどなされていないものの、なかには「性の商品化」に触れた教科書もあった。また、「結婚・出産を通して家族を形成する」というライフ・スタイル以外について記述した教科書もみられた。
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