小麦アレルギー患者に提供するための低アレルゲン化パスタを大量に作製した。酵素処理した低アレルゲン化小麦粉は、グルテンの加工特性が消失しているために患者が調理することは不可能であり、高度な食品加工技術を駆使して加工された低アレルゲン化小麦粉製品として提供する必要があった。粘弾特性およびミキソグラムを検討した結果、低アレルゲン小麦粉は擬塑性のバッターであるためそのままでは加工性に乏しく、でんぷんの糊化特性を利用しなければならなかった。この知見に基づいて、低アレルゲン化小麦粉を加熱押出し成形してゆでパスタ様ヌードルを作製した。 ゆでた市販のスパゲティは0.83付近のテクスチュロメータで測定される高い凝集性を示した。0.83の凝集性を得るためには、オリゴ糖および界面活性剤の添加と高温での攪拌が必要であった。嗜好面から、オリゴ糖は甘味の低いものが望ましく、食塩の添加も有効であった。低甘味オリゴ糖5%、ソルビタンモノステアレート5ppm、食塩1%(それぞれ対粉)を低アレルゲン化小麦粉バッターに添加し、出口温度を95〜100℃に設定したニーダーで低速で押出し加工すると、0.83の凝集性を有するパスタ様製品が得られた。本製品はレトルト加工や冷凍保存が可能であった。官能評価およびテクスチャー特性値から、レトルト袋のままあるいはパスタを直接ゆでると、スパゲティに似たものを得ることができた。 現在、藤田保健衛生大学附属病院宇理須厚雄助教授などにパスタが提供され、臨床評価が進行中である。
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