リンゴの褐変現象はポリフェノール類がポリフェノールオキシダーゼ(PPO)により酸化されることによると考えられている。本研究ではリンゴにおける褐変現象の詳細を解明・抑制する目的で遺伝子組換え技術を用いて以下のような実験を行った。 リンゴPPOの遺伝子をtacプロモーターの下流につないだベクターを大腸菌に導入しIPTGによりPPOを誘導発現した。発現させたタンパク質は電気泳動で分離し、ゲルから精製し、さらにマウスを用いて本タンパク質に対する抗体を作製した。作製した抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、リンゴ及びナシ、ラフランス、モモ、カリン、ビワのリンゴと同じバラ科に属する果実類のPPOとの相同生を調べたところ、いずれも65kDaと59.3kDaのバンドが確認され、これら果実類には性質の似たPPOが存在することが明らかとなった。 さらに、リンゴのPPO遺伝子の配列に基づいて作製したプライマーを用いてナシ、ラフランス、モモ、カリン、ビワのPPO遺伝子の一部分をPCR法でクローニングした。DNA塩基配列を決定し比較したところ、これら果実類のPPOはこれまで報告されている植物のものの中でも特にバラ科間でのホモロジーが高いことが示唆された。
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