まず、食文化という言葉についての「人間が食生活を営む上で、自然・環境に対し、順応する一方で、積極的に働きかけて、実践し、習得してきた様々な行動やその内容である」という解釈を踏まえ、学校給食における食文化教育において特に必要な視点について検討したところ、『人権の尊重』『社会性の育成』『自然的環境との関わり』の3つがあげられた。学校給食で取り上げうる食文化教育の内容は、地域に伝わる郷土食や行事食だけでなく、調理方法、地元産の食材や食器具の利用、食器具の材質、子どもたちと子ども相互や教師、学校栄養職員(以下栄養士と称す)、学校給食調理員(以下調理員と称す)らとの給食を介した関わりなど、様々な事柄を含んでいることを認めた。 学校給食における食文化教育に関する内容について、給食実施態勢の異なる6つの小学校の現状を比較したところ、給食調理方式だけでなく、地元農産物採用の有無という給食実施態勢の違いによって、給食のおいしさや給食指導のしやすさ等、種々の点で大きく異なり、自校式校および地元農産物採用校で、児童にとって好ましい給食が実施されやすいことが明らかになった。これらの原因には、現場で学校給食に携わる教師や栄養士、調理員の努力だけでなく、給食に関する環境整備を担っている学校や自治体などの「管理する」立場側の姿勢が関連していることが示唆された。
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